to one's hand





「『あれ』を燃やして下さい。父が作った『あれ』を、世に出してはいけない。」


ある日、ホンキートンクを訪れた依頼主は、顔面蒼白でそう訴えた。





森の奥深く、蔦の絡まった一軒の研究室。


傾いた扉を壊して入ると、廊下一面に書類や研究道具が散らばっていた。

その散乱ぶりに、研究員達の慌てふためく姿が想像出来るようだった。


「手分けして探すぞ。銀次。広いから迷子になるなよ。」

「ううっ。わかってるよ。蛮ちゃんこそ、気を付けてね。」

「ばーか。俺は、お前程ドジじゃねぇよ。一時間後、またここに集合だ。いいな?」

「オッケー。蛮ちゃん。」


二人は、薄暗い建物の奥へと駆け出した。





「『意志をもった植物』?」

「ええ。ブドウ科ツタ属のつる性の落葉性木本を改良して作られた植物です。私たちは『モンスター』と呼んでいました。」

「けど、意志を持った植物なんて、珍しい話でもないだろ。」

「え?そうなの?」


重い雰囲気に場違いな明るい声。

蛮がぎろりと睨み付ける。


1996年、ウソ発見器の専門家クリーブ・バックスター博士が植物にウソ発見器を接続して、植物が反応を示したって話は有名だぜ?」

「へー。それで、その『モンスター』はしゃべったり、動いたり出来るの?」

「ばーか、そんなの出来るわけが…。」

「出来ます。」


蛮の言葉を遮って、依頼主がきっぱりと言い切った。


「話す事は出来ませんが、自分の体の一部である蔦を自在に動かす事が出来るんです。父は、その蔦によって絞め殺されたんです。」

「嘘だろ?そんなものがあるわけが。」

「けれど、現実に作ってしまったんです。意志を伝達する細胞を強化し、植物に電子頭脳を埋込み、自らの意志と力を持った化け物を…。」


依頼主はそこまで言って、顔を手で覆ってしまった。

眼裏に蘇った『モンスター』に怯えているように、体をガタガタと震わせている。

到底、嘘を付いているようには見えなかった。


『奪還』の趣旨とは違うように思えた依頼だったが、依頼主の尋常ではない姿を見ていると、無下に断る事は出来なかった。

こうして、二人は『モンスター』によって奪われた依頼主の平穏な日々を奪還しにやって来たのだ。


「ここ…か。」


地下の研究室を探していた蛮は、廊下に倒されている壊れたドアを前にして歩みを止めた。

背筋をゾクゾクと震わせている、経験に裏打ちされた『第六感』が、危険を訴えている。


−−確実にいやがるな。突っ込むか?いや、待てよ…。


逡巡していた蛮は気付いていなかった。

すでに、『モンスター』の脅威が迫っていたことに…。



「な…。」


蛮は、足に絡みつかれて、ようやく蔦の存在を知った。

目の前の大きな気配に気を取られ、足元を音もなく近づいてきていたこの細い蔦には気づけなかったのだ。


「このっ。」


食い千切ろうと、腕を振り上げた瞬間、驚異的な力で引きずられ、蛮は尻餅をついてしまった。

そして、そのまま薄暗い室内に引きずられて行った。


「これは…。」


思わず言葉を失う程、『モンスター』は、蛮の想像を遙かに越えた化け物だった。

天井を擦るくらいの体長。本体と言える部分は、蔦ではなく、まるで巨木だ。

そこから、何本もの蔦が枝分かれし、不気味にその身を揺らしていた。

『モンスター』は、蛮を引きずりながら、更に蔦の本数を増やし、蛮の四肢を捕らえ、高々と持ち上げた。



−−このまま、易々と絞め殺されて堪るか。



蛮は深く息を吸い込み、


「今こそ汝が右手に、その呪われし命運尽き果てるまで…」


呪文を詠唱し始めた。



−−だが。


「うぐっ。」


まるで、その詠唱を遮るようにして、四肢を拘束する蔦よりも太いものが、蛮の口腔に突っ込んできた。


「んんっ……ふ、ぐぅ…。」


口腔内を嬲るように、蔦は舌の上を這い回り、上顎を撫で、内側から頬を突く。


−なんだよ、これじゃ。まるで…。


蔦の太さや固さが類似しているせいだろうか。

蛮は男性器を奉仕させられている錯覚に陥っていた。

じわじわと蔦から滲み出る樹液の青臭さが、何処か精液を彷彿とさせ、蛮の感覚を更に麻痺させていく。


ふと、依頼主が『モンスター』に組み込んだ電子頭脳には、父親の性格などがベースになっていると言っていたのを思い出した。


−まさか、こういう趣味の持ち主だったって事か?


「んっ……ふぅ……んんんっ。」


びくんと、蛮の体が一際大きく跳ねた。

忍び寄ってきた蔦が蛇のように蛮の体を伝い、服の中に侵入してきたのだ。


−嘘だろ?


樹液で粘つく蔦は、植物というより爬虫類だ。

クネクネと肌の上を這い、的確に果実に食らいついた。


「うぅんっ……んっ…んーっ。」


蔦の先端が蛮の胸の突起を押し潰しながら、その身を捩った。

何度も擦られて、固く色付いた突起の先端を、細い蔦が寄り集まって、ザワザワと突き出す。

手では決して味わう事のない感触と動きは、はからずも蛮の体から興奮を煽っていくものだった。


「んっ……んんっ……ふぅっ……。」


息苦しく唸っていただけの蛮の声音に、次第に艶めいたものが混じりだした。

その変化を、『モンスター』は感じ取ってでもいたように、今度は細い蔦が何本も集まり、蛮のズボンのベルトに絡んだ。

そして、寄り集まったそれらは、器用に蛮のベルトを外し、チャックを下ろすと、下着すらも綺麗に脱がせてしまったのだ。


「んんーんっ………んぐっ…。」


『モンスター』の意図が読め、蛮は懸命に身を捩って逃れようとするが、四肢を拘束された状態では、逃げられるわけもない。

蛮の口腔を犯していた蔦が、蛮の性器に巻き付いた。


「あっ……ちょっ……そこ、は。」


唾液と樹液とで濡れた蔦がねっとりと絡み付いて、前後に動き出す。

蔦の表面にある小さな凹凸が快楽のツボを刺激して、ぬめぬめとした感触に背筋を駆けていくモノがある。


「ふっ……ぁ………あぁ……。」


疼き出した秘部にも、『モンスター』の魔の手が伸びる。

樹液の力と蔦の細さで、難なく蛮の内に入る事に成功する。


「……っ!あぁ……あっ………や、やめっ。」


ビクビクと腰が跳ね上がる。

肉襞を擦りながら、蔦は縦横無尽にナカを掻き乱していった。

そして、一本、二本、三本…と、次第にその本数を増やしていく。


「あぁ……っ……あっ……んっ……ぁ。」


奥を突くもの、前立腺を押し上げるもの、入口を撫でるもの、入り込んだ蔦のどれもが違う動きをし、全て的確に蛮の官能を刺激していた。

もはや、何本入り込んで、ナカを犯しているのか、犯されている蛮ですらわからなくなっていた。


その間にも、胸の突起や性器を扱き上げる動きが止んでいるわけでもない。


「あっ……もぅ……イ、くっ。」


蛮はとうとう耐えきれずに、『モンスター』の緑の体に、白液散らした。


「はぁはぁ……。」


荒い息遣いが室内に響く中、蛮の性器に絡み付いていた蔦が退いた。

終わるのかもしれない、蛮は僅かな希望を抱いた。


だが、それは瞬く間に打ち砕かれた。

退いた太い蔦が躊躇いもなく、秘部を貫いたのだ。


「ひぃ……いっ……あ、ぁ……あぁっ………。」


細い蔦が数本残っている状態で貫かれ、内蔵という内蔵を押し上げられている様な圧迫感に、蛮は息もうまく吸えなかった。

そんな隙間もないようなきつい状態でありながら、『モンスター』は蔦を動かし出したのだ。


「やぁ……っ………無理っ……やめ、ろ……い、ぁ…。」


重く鈍い衝撃が全身を駆けていく。

恥骨が軋みを上げながら、『モンスター』が突き上げる衝撃を、ひたすらに甘受した。

腰に巻き付いた蔦が蛮の体を揺さぶり、ただでさえきつい行為に追い打ちを掛ける。


「あぁ……ひっ、いぃ………あぁ、あ……。」


萎縮したはずの性器は、再び鎌首をもたげ始めた。

辛いはずの行為ながら、体は確実に快感を拾い上げていたのだ。



−待ち合わせ時間に俺が来なければ、銀次は不信がって探しにくるはずだ。

 それまでの辛抱すれば…。



快楽に溶け出していく頭で、蛮は銀次の到着を願った。










「蛮ちゃん!」

「銀次…。」


願っていた者の登場に、蛮の胸に安堵の気持ちが飛来する。


「ごめんね。蛮ちゃん。」


詫びる銀次に、到着の遅れを気にしていての事かと思っていると、その口端に不気味な笑みが浮かんだのだ。


その妖しい笑みと呼応するように、蔦の動きが変化した。

高々と吊り上げられていた体は、銀次の前に仰向けの体勢にさせられ、膝を曲げたM字に開脚した格好で足に別の蔦がグルグルと巻き付いてきたのだ。

まるで、銀次の前に供物として捧げられているようだ。


「いい格好だね。蛮ちゃん。」

「…てめっ。見てないで、どうにかしろっ。」


ふと、銀次の身に微弱な電気が流れている事に気付いた。


「まさか、お前…。」


いつか地獄谷で銀次が藻泥たちと心を通わせた、という話を思い出す。

この『モンスター』の動きの元は、電子頭脳だ。銀次の力を持ってすれば、操るのなど容易いのかもしれない。


蛮の確信を肯定するように、銀次は再び唇に笑みを描いた。


「ごめんね。蛮ちゃん。蛮ちゃんが『モンスター』に攻められてるの見てたら、興奮しちゃったんだ。」


言いながら、チャックを下ろすと、怒張した銀次の性器が飛び出した。


「銀次っ。止めろ。」

「それは聞いてあげられないよ。だから『ごめん』って言ったでしょ?」


猛った性器を『モンスター』が慣らした入口に押し当てられて、漸く蛮は、銀次の謝罪の意味を知ったのだ。


「いつっ……あぁ、んっ……っ…ぁ。」


体を引き裂く凶器から、微弱な電気が流れ込む。

貫かれる衝撃は、電気が走る感覚に類似していたけれど、これはまさしく本物だった。


「ひっ……あっ……くぅっ……ン、ぁ……やめっ。」

「そっか。『モンスター』操ってるから、電気流れちゃってるんだ?でも、ちょっぴりだから、痛くないでしょ?」


銀次はそう言うが、蛮は激しく頭を振った。

例え、微弱だろうと、柔肉にその刺激は強すぎて、腰はおもしろいように震え続ける。


「嘘ばっかり。こんなに俺を締め付けて。本当は、気持ちいいくせに。」


笑って、銀次は腰を回し入れた。


「いっ……あァ、……っ……ひぃ……あっ………。」


肉壁にめり込む性器から、迸る電流。

ビリビリとした痺れが、腸壁すべてを性感帯に仕上げていく。

触れる全てが刺激され、腰の疼きへと変えられて、蛮はただ身悶えるしかなかった。


「あ、ぁ………っ…ひぃ、イ……もっ、駄目っ。」


吐精寸前の性器はパンパンに膨らみ、今か今かと解放を待ちわびていた。

そんな性器を、銀次は右手て鷲掴んだ。


「ひっ……い、つっ………あぁ……っ。」


蛮の喉の奥から悲痛な悲鳴が吐き出される。

デリケートな部分に快楽を通り越した痛みが走る。


「やめっ。銀次、離……せぇ………ぁ。」


身を捩り、暴れる蛮を大人しくさせようと、銀次は割れ目に親指を突き入れた。


「…………っ!!」


もはや、叫びは声にすらならなかった。

細管を見えない電流が犯していく。

蛮の瞳から、ボロボロと零れていく涙を見遣り、銀次は胸の奥が高鳴っていくのを感じた。


そして、銀次は蛮の性器を握ったまま、再び腰を押し進めた。

ぐちゅり、と淫らな音をさせて、樹液が泡立つ。


「いっ……ひ、ンっ………あ、ぁ……あっ。」

「蛮ちゃん…。この『モンスター』燃やしちゃうなんて勿体ないと思わない?」

「…ぁ。……お前、何言っ……っ。」

「だって、蛮ちゃんがこんなに喜んでるのに…。」

「ち、違……。あぁ、ア………。」



深い深い森の奥で、蛮の叫びが響いている。



『モンスター』が本当に燃やされたかどうかは、銀次だけが知っている。





【あとがき】

バッドEDは、銀次+触手×蛮ちゃん。さらに、電気プレイという豪華版(笑) 最近、黒銀次が好きみたいです。(*´△`) え?前から?失礼しました(笑)


5万打記念SSです。貰ってきちゃいました。折角だから黒銀次仕様で。師匠と呼ばせてください。流石です〜v(焔)


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